『宇宙よりも遠い場所』第12話を観よう
「サブタイがメインタイトルの回」、いわゆるタイトル回収の回にハズレなし、とよく言われている。
そんな第12話のサブタイトルの「宇宙よりも遠い場所」とは、報瀬の母・貴子の書いた本のタイトルであり、つまりは南極のことだ。
アバン。母が南極で消息を絶ったことを知らされた報瀬は「覚めない夢のよう」とモノローグで語る。南極に着けば覚めると思った夢も、今でも母にメールを送っているように「まだ続いている」。
Aパート。しばらくの間、劇伴が流れずに進行する。そらへと昇る気球を眺める三人と報瀬。劇伴がふたたび流れ出すのは、四人で玉ねぎの皮を剥いているシーンから。南極に来ても泣かなかった、母が消息を断った内陸に行っても夢が覚めなかったら? と彼女は不安な胸中を吐露する。
場面は変わって、バーベキュー。弓子に「いい友達」と評された、と結月は嬉しそう。盛り上がるメンバーと離れたところでの吟との会話後、報瀬は南極に行くために貯めた100万円を数える(女子高生が金を数えるシーンで泣けるアニメなどあるのだろうか)。そして、報瀬は内陸旅行に同行する決心をして、Aパート終了。
Bパート。内陸部に向かうにつれ、環境は厳しさを増す。息が辛くなるほど気温は下がり、視界がなくなるほどのブリザードが吹く。まるで、南極が行方不明の母は死んだという事実を報瀬に伝えようとしているかのようで、見ていてつらい。寝付けない報瀬に、キマリが南極へ連れてきてくれたことへの感謝を伝えた翌日、報瀬は母にメールを送る。
Dearお母さん
友達が出来ました
ずっと一人でいいって思っていた私に、友達が出来ました
ちょっぴり変で、ちょっぴり面倒で、ちょっぴりダメな人たちだけど
一緒に南極まで旅してくれる友達が
喧嘩したり、泣いたり、困ったりして
それでも、お母さんのいたこの場所に
こんな遠くまで、一緒に旅してくれました
私はみんなが一緒だったから、ここまで来れました
お母さん、そこから何がみえますか?
お母さんが見たのと同じ景色が、私にも見えますか?もうすぐ着きます
お母さんがいる、その場所に(12話より引用)
天文観測所についてからの感涙シーンの数々を文字に起こすなど野暮というもの。しかし、それでも、遺品のパソコンを基地に持ち帰ってからのシーンについては、書き留めておきたい。
報瀬はパスワードに母の誕生日を入力するも、ログイン失敗。鏡に映る、パソコンに貼られた母と自分の写った写真を見て、自分の誕生日「1101」を入力すると――ログインに成功する。
メールボックスを更新すると、キマリがモノローグでよく言う「決壊し、解放され、走り出す」かのように、たくさんの未読メールが届く。
母が行方不明になったと知らされても、それを受け入れられず、メールを母へ送り続けた報瀬。けれど、ずっと送り続けていたメールは、「宇宙よりも遠い場所」――天国の母には、届いていなかった。
3年間続いた夢の終わり。報瀬は涙を流して、母の死を実感する。
母はもういないけれど、最後のメールに綴った「ちょっぴり変で、ちょっぴり面倒で、ちょっぴりダメな」友達はすぐそばにいる。
昭和基地全体を俯瞰で映した特殊エンディング。澄み切った昼空は、星々のきらめく夜空に。――45日間の白夜*1を経て、昭和基地に夜がやってくる。
結月「オーロラとか見えるんですかね」
報瀬「夜になれば」
日向「夜にはならないんだよなあ、わたしたちがいる間は」
(第11話「ドラム缶でぶっ飛ばせ!」より)
いよいよ、次は最終回。