「生誕は故人にしか使えない」はいつ生まれ、いつ広まったのか
ほぼ毎日、日付が変わるとツイッターのタイムラインに流れてくる○○生誕祭20XXのハッシュタグ。それに付随して、ときたま流れてくるのは「生誕は生きている人には使えない」という理論。よく見かけるこの理論はいつ生まれたのかを検証した。
デマと断定して「生誕 故人 デマ」で過去のツイートを調べると、この理論が一気に広まったのは複数のまとめサイトで掲載された下のツイートがきっかけだと思われる*1。
ごめんな!!!地雷だからさ何度も言わせてくれ!!!あのな、誕生祭は誕生を祝う日で!!!!生誕祭と聖誕祭は死んだ人の誕生を祝う日だから!!!!生誕祭っておま!!!!!!!推し殺さないであげて!!!!!!!!!下手すると命日みたいな意味合いなるから!!!!!誕生祭!!!!!な!!!!
2017-10-26 00:28:22
『生誕祭』と『誕生祭』の違い - Togetterより引用。元ツイートはアカウントと共に消えている
togetterのまとめによれば、このツイートをしたアカウントが参照したのはこのサイト(2016年9月12日)。
chu-channel.comしかし、このサイトには
偉人や亡くなっている人の生まれた事を表す。生きている人に使う事もある
と書かれていて、「死んだ人にしか使えない」という印象は受けない。
2016年9月以前に生誕と誕生の違いを解説している(欲を言えば、生誕は故人にしか使えないと書いている)サイトはあるのか。Googleで期間指定の検索をして出てきたのは次のサイト(2015年6月4日)。
chigai-allguide.comサイト内の記述では先程と同様に、「誕生は人間以外にも使える」という印象しか受けなかった。
さらに遡って出てきたのは知恵袋(2011年4月18日)。
「生誕」は亡くなられた方が誕生された年や年月日です。
(中略)
生きている人の「誕生日」や「誕生祝」です。
ようやくそれらしきものが出てきた。しかし、一切根拠なし。
さらに遡ると、出てきたのはまた知恵袋(2009年5月20日)。
生誕と誕生ってどう違うんですか?
生誕は亡くなった人に使い、誕生は生きている人に使う、というイメージがあります。仲のいい友人が毎年私の「生誕祭」をしてくれます。
いわゆる誕生日会なのですが、なんとなく死んだ人みたいでいやです。
お前の感想じゃねえか。
めげずに辿ると、出てきたのは知恵袋(三回目)(2007年12月23日)。
これより前にそれらしきものが見つからなかったので多分これが一番早いと思います。
けれど内容はちょっとズレてるかな……。
結論
「生きている人に生誕○○年と使えますか?」という質問が知恵袋に投稿され、「そういう言い方はしない」と回答される(2007-12-23)
↓
「生誕と誕生ってどう違うんですか?」という質問が知恵袋に投稿され、「意味は同じだが、生誕は偉人にしか使いませんよね」と回答される(2009-05-20)
↓
「生誕と誕生の違いはなんですか?」という質問が知恵袋に投稿され、「生誕は亡くなっている人に使う。誕生は生きている人や人以外にも使う」とソースなしで回答される(2011-04-18)
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【違いがわかる辞典】に「生誕」と「誕生」の違いが載るが、「生誕は動物や事物に使わず人(特に偉人)に使う」と記載されている(2015-06-04)
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【Churio!】に「生誕」と「誕生」の意味の違いが載るが、「生誕は偉人や亡くなった人(生きている人にも使う)に、誕生は人や物事、動物など」と記載されている(2016-09-12)
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【Churio!】を参考にした人が「生誕は死んだ人を祝う」という旨のツイートを投稿する(2017-10-26)
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そのツイートがまとめられ(2017-10-27)、今日まで「生誕は死んだ人にしか使えない」という情報が出回るようになる
「生誕は故人にしか使えない」に根拠はない。