放牧中

もはや見えぬ光よ かつて私の物だった光よ もう一度私を照らしてくれ

鎧塚みぞれが髪を触るのは

またかよ! と思われてしまいそうだが、まだ『リズと青い鳥』について書かねばならない。

今回は、鎧塚みぞれが自分の髪を触ることについて。

 

少なくとも、12の場面でみぞれは自分の髪を触っている。

  1. 希美が青い羽根を拾ったとき
  2. 希美から羽根を貰ったとき
  3. 優子が「今年の北宇治は~」と部員に話しているとき
  4. 希美と一緒に帰ろうとしたが「パートの子らとファミレス行くんだ」と言われたとき
  5. 担任から進路希望調査表の再提出を求められたとき
  6. フルートの光の反射で遊んでいた希美がいなくなっていたとき
  7. 新山先生に第三楽章について話しかけられたとき
  8. 新山先生と会っていたことを言わず「ふぐに餌あげてた」とだけ答えたとき
  9. 「一緒に行こう、あがた祭り」と希美に誘われたとき
  10. 梨々花のリードを作ってあげているとき
  11. 麗奈に「先輩の音、窮屈そう」と詰められたとき
  12. 新山先生に「好きな人を大切にしすぎてしまうのね」と言われたとき

再三になるが、数々のインタビューで山田尚子監督はこう答えている。

しぐさというのは、彼女たちひとりひとりの思いの中から生まれてくるものだと思うんですね。だから彼女たちの心が動いた瞬間に「どんなことを思っているんだろう?」と、そのときのしぐさを取りこぼさないように心がけました。*1

上記の12個の場面でみぞれは心が動いているのだ。その中でも、気になるいくつかのシーンをとりあげる。

まずは、5つ目「進路希望調査表の再提出を求められた」場面。

希美と別れ、教室前に佇んでいたみぞれの右手を夏紀が高く上げる微笑ましいシーンの後である。夏紀にその手を持って先導され、教室に踏み入れようとしたその矢先、担任に呼び止められてしまう。体育でのバスケシーンでもみぞれの代わりに試合に出るような優しさを見せてくれた夏紀だが、彼女は優しすぎる。そんな彼女では、みぞれを引っ張っていくことができないのだ、と象徴しているようで、観ていて悲しくなる素敵なシーンだ。

 

次に、8つ目の「新山先生と会っていたことを言わず『ふぐに餌あげてた』とだけ答えた」シーン。

鑑賞後の感想で「希美はみぞれの想いに気付かないフリをするのがずるい」という意見をよく見かける。しかし、この場面はどうだろう。「何してたの?」という希美の問いに対し、新山先生から音大受験を勧められたことを言わず、餌やりについてだけ答えて誤魔化そうとしている。やはりみぞれはずるい。

 

髪を触るシーンの周辺だけでも、これだけ見どころがあるので、映画館で公開されているうちに観てほしい。

 

おまけ

公開第6週の鑑賞特典はフィルム。

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私が当てたのは、希美が絵本の「リズと青い鳥」を並んでみぞれと読んですぐのシーン。

特典がなくならないうちにぜひ映画館へ。

*1:リズと青い鳥山田尚子監督「彼女たちの言葉だけが正解だと思われたくなかった」|Zing!